必須栄養素 ビタミンB群②

2024年11月16日

ナイアシン(ビタミンB3)

ナイアシン Niacin
ナイアシンは体内で同じ作用を持つニコチン酸、ニコチン酸アミド等の総称で、酸化還元酵素の補酵素の構成成分として重要です。
体内で必須アミノ酸のトリプトファンから生合成しているので、「ビタミンは体の中でつくることができない」というビタミンの定義の1つからは外れるビタミンです。
タンパク質を60g摂取すると約600㎎のトリプトファンを摂取し、ナイアシンは10㎎生合成されます。
ナイアシンは生体中に最も多量に存在するビタミンです。
糖質、タンパク質、脂質のエネルギー代謝をスムーズにしています。
また、脳神経の働きを活性化する、皮膚を健康に保つ、血液の循環をよくするなど、体内で起こる様々な酵素反応に関与し、体の機能を正常に働かせるために重要な役割を果たしています。
欠乏により、皮膚炎、下痢、精神神経障害を伴うペラグラ、成長障害等が起こることがあります。
ナイアシンの食事摂取基準(推奨量)は、成人男性で1日13~15㎎NE、成人女性で1日10~12㎎NEです。NE(niacin equivalent)とは、ナイアシン当量という意味で、食品中のナイアシンの量にトリプトファンから体内でつくられる量を加えたものです。

ナイアシンが多く含まれる食品は、カツオ、マグロ、タラコなどの魚介類や、レバー、肉類、きのこ類、落花生などです。
また、体内で合成されるナイアシンの材料となるトリプトファンの摂取も大切です。
ナイアシンを多く含む食品はタンパク質含量も高いため、トリプトファンも多く摂れます。

パントテン酸(ビタミンB5)

パントテン酸は補酵素であるコエンザイムAとアシルキャリヤータンパク質の構成成分です。
アシルキャリヤータンパク質(ACP)は、脂肪酸や脂質の生合成において脂肪酸の担体として機能するタンパク質です。
パントテン酸の名称はギリシャ語由来で「いたるところに存在する酸」という意味です。
文字通り、植物性、動物性を問わず幅広い食品に含まれています。
糖、脂肪酸の代謝における酵素反応に広く関与しています。
コレステロールからつくられる抗ストレス作用をもつ副腎皮質ホルモンの合成にも関与し、心身の健康を根底で支える大切なビタミンといえます。
パントテン酸は様々な食品に含まれているため、通常の食生活で欠乏が起こることはありません。
ただし、極端に偏った食事で栄養失調状態になると欠乏により、皮膚炎、副腎障害、末梢神経障害、抗体産生障害、成長阻害等が起こることがあります。

食事摂取基準(目安量)は成人で1日5~6mg。
パントテン酸は体にためておけないため、毎日コンスタントに補給することが大切です。
特に疲れを感じやすい人やストレスの多い人、かぜをひきやすい人、妊娠中や授乳中の人などは、多めに摂るよう心がけましょう。
万が一過剰に摂取しても水溶性なので尿中に排出されるので過剰症の心配はまずありません。

パントテン酸が多く含まれる食品
納豆、レバー、肉類、魚介類、きのこ類、卵黄、牛乳など

ビタミンB6

ビタミンB6は、ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミン等、同様の作用を持つ10種以上の化合物の総称です。
アミノトランスフェラーゼ、デカルボキシラーゼ等の補酵素として、タンパク質の基となるアミノ酸や脂質の代謝、神経伝達物質の生成等に関与します。
アミノトランスフェラーゼには、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)とアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)などがあります。
ALTとASTは血液検査で肝機能障害の有無を程度を確認する項目にありますよね。
デカルボキシラーゼは、カルボン酸から二酸化炭素を取り除く反応を触媒する酵素です。
正直なところここは難しいところなのでさっと通過しましょう。

食事で摂ったタンパク質は体内でいったんアミノ酸に分解されてから、人の体に必要なタンパク質に再合成されて細胞や皮膚、髪、骨、筋肉などの材料になります。
ビタミンB6はアミノ酸の分解と再合成の両方の過程で、ピリドキサールリン酸という補酵素に生合成された後に働きます。
そのため十分に摂取することで、丈夫で健康な皮膚、粘膜、髪、歯、爪などの生育につながります。
脂質の代謝や赤血球のヘモグロビンの合成、免疫機能の維持にも不可欠です。
さらに、セロトニン、ギャバ、ドーパミンなどの神経伝達物質の合成にも関与しており、神経の働きを正常に保つためにも大切です。

欠乏により、皮膚炎、動脈硬化性血管障害、食欲不振、口内炎、舌炎、貧血などの他、イライラ、不安など精神的不調や、足がつる、手足がしびれるといった末梢神経の症状が現れることもあります。
抗生物質や経口避妊薬を長期服用している方は欠乏しがちです。

万が一過剰に摂取しても水溶性なので尿中に排出されるので過剰症の心配はまずありませんが、サプリメントなどで大量に摂取した場合、まれに感覚が鈍くなる感覚性ニューロパチーが起こることがあります。

食事摂取基準(目安量)は成人で1日1.1~1.4mg。
ビタミンB6は体にためておけないため、毎日コンスタントに補給することが大切です。
しかし男女共にほとんどの年代で不足傾向にあります。
保存や調理による損失が大きいビタミンなので多めに摂ることを心がけましょう。
特に、肉や魚などのタンパク質を多く摂る人、アルコールを多量に飲む人、妊娠中の人や授乳中の人は、積極的に摂取しましょう。
カツオやマグロなどの青魚や肉、レバーなどの動物性食品に多く含まれます。

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