オートファジーと疾患

2024年05月1日

Illustration of autophagy

アルツハイマー病やパーキンソン病、がんなどの原因をオートファジーで除去することができます。
脳の神経細胞や心筋細胞は生まれてから死ぬまでずっと同じ細胞を使い続けなくてはいけません。
このため中身の作り替えが必要です。
このときにオートファジー機能による分解が行われます。
この働きが悪くなると古いものや壊れたものがどんどん溜まっていき、やがては細胞が死んでしまいます。
これを神経変性疾患といいます。
細胞内の不要なタンパク質の蓄積が共通する特徴として見られます。
身近な疾患としてアルツハイマー病があります。
アミロイドβペプチドというタンパク質の断片などが神経細胞に蓄積して脳細胞が死に、認知能力が低下したり運動機能にも支障が出てきます。
オートファジーがしっかり機能するとこういったことが防げたり、発症を先延ばしできたりします。

オートファジーで働く遺伝子の変位が発症に関わることがあります。
有名な疾患としてはパーキンソン病があります。
パーキンソン病では、大脳基底核の黒質と呼ばれる部位の神経細胞が変性します。
大脳基底核の主要な神経伝達物質はドパミンです。
ドパミンの主な作用は、筋肉に送られる信号を増幅することです。
大脳基底核の神経細胞が変性すると、ドパミンの生産量が減るとともに、大脳基底核の神経細胞同士をつなぐ接続の数が減少します。
すると、筋肉の動きを制御するという大脳基底核の正常な働きが損なわれます。
振戦
動作緩慢
運動減少
異常姿勢や歩行
協調運動の障害
などの運動障害が起こります。
オートファジー機能が低下して損傷したミトコンドリアを除去できなくなることで発症します。
ミトコンドリアが損傷すると中から有害物質である活性酸素が放出されるからです。
活性酸素は正常細胞のDNAを傷つけます。

 逆に言うとオートファジーの機能を向上させることで治療や予防ができる可能性があります。
機能低下が未病につながり放置しておくと疾患に悪化していきます。
高尿酸血症、2型糖尿病、動脈硬化などのいわゆる生活習慣病はいずれもオートファジーの機能低下によって発症あるいは悪化している可能性が高いです。
がんや消化管に重篤な炎症や潰瘍を引き起こすクローン病もオートファジーに関連する遺伝子疾患です。
オートファジー機能が下がると抗体を作る能力が低下します。
また、オートファジーで細胞の中に隠れた菌を包み込んで分解できます。
免疫細胞ではない細胞でもオートファジーを使って病原菌やウイルスをやっつけることができるのです。

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