オートファジー

2024年03月17日

オートファジーとは

オートファジーは1950年代にベルギーのChristian de Duveクリスチャン・ド・デュープによって発見、1963年に発表されました。
ファジーといっても1990年頃にパナソニックが流行らせた「ファジー家電」のファジーとは意味がまったく別物です。
こちらの「fuzzyファジー」は「曖昧」という意味です。
低地ドイツ語の「fussig」で意味は「ゆるい・スポンジ状の」の説があります。
一方オートファジーはギリシア語由来で、
オートautoは「自己」、ファジーphagyは「食べる」という意味です。
「自食作用」と訳されます。
2016年に大隅栄誉教授がノーベル生理学・医学賞を受賞したことで世界的に広く注目されています。
自食作用とは細胞がタンパク質を分解して再利用するはたらきのことです。

ところで細胞とはなんでしょうか?
生物はすべて細胞の集合体です。
ヒトの場合、細胞の数は約37兆個です。
かつては60兆個と言われていましたが、組織によって細胞の大きさが異なるので、それを考慮して再計算した結果2013年に37兆個に改定されました。

細胞の特徴は
・細胞は1個で生きていける
・細胞は分裂して増える
・物質の合成や分解など生存に不可欠な化学反応(代謝)が細胞の中で行われる
・細胞1個の中にその生物の1個体、ヒトであればヒト1人を作るのに必要な遺伝情報がすべてつまっている

この遺伝情報を「ゲノム」といいます。
ゲノムとは、遺伝子(gene)と染色体(chromosome)から合成された言葉で、DNAのすべての遺伝
報のことです。
1996年にクローン羊のドリーが生まれましたが、細胞1個から生物1個体を作ることが可能である実例です。

ちなみにDNAという単語がありますが、これはヒトの細胞では核の中の染色体に存在します。
A(アデニン)
T(チミン)
G(グアニン)
C(シトシン)
の4種類の部品でできています。

DNA中ではAとT、GとCが結合していて、その結合の対を塩基対と言います。
DNAははしごをひねったような形をしていて、核の中の染色体の中に折りたたまれて入っています。
DNAを簡単に言うと、私たちの体を作る設計図と言えます。
書籍3万冊以上に匹敵する膨大な遺伝情報が書き込まれています。

オートファジーの主要機能

近年急速に研究が進んでいます。
オートファジーが生体にとって極めて重要で多岐にわたる機能を持つことが分かりつつあります。
現時点で分かっている主要な機能が3つあります。

1 栄養源の確保
先述の通りヒトは約37兆個の細胞の集合体でいろいろな働きを分担します。
ですが酵母のような単細胞生物はいろいろな働きを1個の細胞の中でしなくてはいけません。
栄養を蓄えたくてもスペースに限りがあります。
このため常に周りから栄養を取り入れ続ける必要があります。
それができなくなるとすぐに命に関わります。
ここでオートファジーの登場です。
細胞の成分を分解して栄養源を確保します。
タンパク質を分解するとアミノ酸になります。
蛇足ですが、コラーゲンもタンパク質です。
ヒトの体内のタンパク質の約半分がコラーゲンです。
このアミノ酸をエネルギー源として使ったり、アミノ酸を材料にして生存に不可欠なタンパク質をつくったりします。
多細胞生物は脂肪細胞のような栄養を貯蔵できる細胞があり、多少の飢餓は耐えられます。
しかしヒトを含む哺乳類は出産直後に不可欠な機能となります。
哺乳類の赤ちゃんは胎内にいるときはへその緒から栄養をもらえます。
出産直後はへその緒が切られるので母乳によって栄養が得られるまで飢餓状態になります。
この間をオートファジーの機能で命をつなぎとめてくれます。
また、飢餓だけでなく低酸素、低温、放射線などさまざまなストレスにさらされた時もオートファジーが活発化します。
この場合はプログラム死を誘導するタンパク質の分解などのためです。

次回に続きます

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