リンパの基本知識1
2024年06月1日
俗にリンパを流すと体に良い、などとよく耳にします。
ところでリンパって何?
流れが悪いと体にマイナスな影響がある、というくらいのふわっとしたイメージを持っている方が多いことでしょう。
そこでリンパについて簡単に解説いたします。
リンパ液
リンパ管の中を流れる液体をリンパ液(一般的にはリンパ)と呼びます。
リンパ液の主成分は、血液中の液体成分である血漿(けっしょう)です。
ちなみに血液は単なる液体ではなく、固形分を多く含みます。
血液の液体部分である血漿は全体の約55%、固形成分である血球(赤血球、白血球、血小板)が約45%です。
血液は心臓から出て、また心臓に帰りますが、一部の血液は体のすみずみで毛細血管から外に出て、体内の細胞に酸素と栄養素を届けています。
この毛細血管の外に出るのは液体成分の血漿です。
届け終えた血液は再び血管に戻りますが、その際に戻らなかった水分を組織液といいます。
全身の細胞はこの組織液の中に浸った状態で存在しています。
体液には細胞内液と細胞外液があります。
細胞外液が液体として体を循環している体液です。
細胞外液はいくつか種類があります。
・血液
・リンパ間質液(組織液)
・リンパ管内液
リンパ間質液とリンパ管内液は同じ体液であり、リンパ間質液に含まれる固形物は水分と一緒に毛細リンパ管に流れ込みます。
毛細血管の多くは真皮内にあり根のように皮膚の中に広がっています。
リンパ間質液の水分は毛細血管に再吸収されます。
固形物は水分とともに毛細リンパ管に吸収され、二酸化炭素など水に溶ける老廃物は毛細血管に再吸収されます。
毛細血管は筋肉に多く存在していますが、毛細リンパ管は筋肉には存在しません。
毛細リンパ管は筋膜に少しだけ存在していますが、酸素と栄養素を大量に消費する筋肉の固形の老廃物や白血球は筋肉から真皮に流れていきます。
大量の白血球はこうして筋肉から皮膚へとパトロールをし最終的には毛細リンパ管に流れ込みます。
組織液の一部が毛細リンパ管に入り、リンパ液となります。組織液には細胞から出た老廃物や細菌、ウイルスなどの異物が含まれており、それらも一緒にリンパ管に取り込まれます。
血液が外に出る時、赤血球は大きすぎて血管の壁を通り抜けられないため、外に出た液体は赤色ではなく薄い黄色をしています。
また、血液を固まらせる成分である血小板も血管の壁を通り抜けられないため、リンパ液の凝固能力は血液より低くなります。
血漿は壁を通り抜けて組織液の基礎になり、リンパ管に入ってリンパ液となります。
リンパ液は全身のどこの血管から外に出た組織液を取り込んだかによって、成分が異なります。
例えば、小腸から取り込んだリンパ液は脂肪球を含むため、乳白色で、他のリンパ液とは区別して、乳糜(にゅうび)と呼ばれています。
「糜」とは、『濃いお粥』という意味です。
リンパ管
血液が流れる管は血管ですが、リンパ液が流れる管はリンパ管と呼びます。
血管は心臓を起点にして輪を書くように体の中を循環しています。
心臓から出た血管は動脈であり枝分かれしながら細くなり、さらに毛細血管となって体の各所をまわり、その後、静脈となって段々と集まり太くなって心臓まで戻ります。
リンパ管は輪になっておらず、一方通行の道のような構造です。
全身の体の隅々で毛細リンパ管として始まりますが、その起点は閉じられており、どの組織ともつながっていません。
薄い壁を持つ1層の細胞で形作られます。
静脈と似た構造ですが、静脈よりも壁が薄く透過性が高いため、大きな分子のタンパク質や病原体など通常血管には入らないものも通します。
神経の存在も確認されています。
始まりは細くて網目状の毛細リンパ管ですが、それらが段々と集まって合流し、集合リンパ管、そして主幹リンパ管となり、太くなっていきます。
最後は下半身および左上半身のリンパを集めた胸管と、右上半身のリンパを集めた右リンパ本幹と呼ばれる2本にまとまって、鎖骨下にある静脈に注ぎます。
リンパ液は静脈とつながる出口に向かって、一方向に流れています。
弁(半月弁)があるので基本的には逆流することはありません。
心臓は血液を流すポンプの役割ですが、リンパ管にはそのような存在がありません。
代わりに、
・筋肉の収縮と弛緩によって生じる圧力
・呼吸によって生じる胸の中の圧力の変化
・体の外からのマッサージ刺激
などがリンパ液を流す推進力です。
その圧力は弱く、血液と比べるとリンパ液の流れるスピードはゆっくりです。
流れる速さも一定ではありません。
しかし、近年、リンパ管が想定されていた以上に能動的な動きをしていることが分かってきました。
例えば、毛細リンパ管は組織液(間質液とも言う)を吸い上げるためのポンプの役割を備えているとされています。
このポンプはリンパ液を流すためのものではなく、リンパ液を吸い上げるためのものなので、血液にとっての心臓とは意味合いが違いますが、リンパ管がその起点で能動的な動きをしていると言えます。
また、リンパ管の壁が収縮することによってリンパ液を流していることも明らかになってきました。
長年、受動的な器官と思われていたリンパ管ですが、能動的に動いていることが明らかになってきています。
体の表面や筋肉のリンパの流れ
皮膚は筋肉に比べてエネルギーをあまり消費しないため毛細血管は最小限です。
筋肉は大量に酸素と栄養素を消費します。
このため筋肉にはグリコーゲンという糖の貯蔵施設もあります。
筋肉の束の中は毛細血管が非常に多くあり、筋肉は収縮や拡張を繰り返しており、拡張時には筋肉束内圧は低くなります。
この時に毛細血管から大量の血漿成分と白血球や血小板、少量のタンパク質がでてきます。
筋肉収縮時には毛細血管内圧より筋肉束内圧が高くなり大量の水分だけが毛細血管に再吸収されます。
筋肉は拡張と収縮を繰り返して、毛細血管から血漿成分と白血球と血小板と少量のタンパク質を吸い出して9割の水分は毛細血管に押し戻し、残りを筋肉外に押し出します。
この押し出された水分は ファシア(筋膜)という立体的な編み目状の組織を通過して真皮に辿り着き、真皮内にある毛細リンパ管の隙間(蓋)が開いた時にのみ毛細リンパ管に流れ込みます。
どのようにして毛細リンパ管の蓋が開くのかというと、毛細リンパ管の表面についた繋留フィラメントという紐が毛細リンパ管の一個一個の細胞に付いています。
これが引っ張られると、毛細リンパ管細胞一個一個は少しずつ重なり合っている隙間が開きます。
白血球、血小板、タンパク質、細胞の死骸やウイルスなどの異物が毛細リンパ管に流れ込みます。
いつ毛細リンパ管の周りの紐が引っ張られるかというと、皮膚がずれた時です。
それは筋肉側が動いた時と皮膚側が動いた時であり、その動きは毛細リンパ管の0.02mmです。
筋肉側が硬くなっていると筋肉側からのズレが起こりにくく、皮膚を撫でるのも少しでも圧力が高いと皮膚がずれるより圧力が高くなり毛細リンパ管は広がるどころか外側の圧力で潰されてしまいます。
輸送管である皮下のリンパは流れますが、細胞間を満たしている固形の老廃物は流れないばかりか溜まってしまいます。
この時外圧からの水分だけは毛細血管に吸収されるのでますます細胞間の老廃物の濃度は高くなって細胞間が多量のゴミ屋敷になってしまうのです。
リンパマッサージが体表を軽くさするようにするのは、こういった理由によるものです。