必須栄養素 ビタミンB群③
2024年12月1日
ビオチン(ビタミンB7)(ビタミンH)
ビオチンはカルボキシラーゼの補酵素として、炭素固定反応や炭素転移反応に関与します。
別名のビタミンHの『H』はドイツ語のHaut(皮膚)のことで、ビオチンが皮膚炎を予防する成分として発見されたことに由来します。
皮膚や粘膜、髪、爪の健康を維持するために大切なビタミンです。
カルボキシラーゼとは、生体内で基質に炭酸を付加する酵素です。アデノシン三リン酸(ATP)のエネルギーを利用し、補酵素としてビオチンを必要とします。
肝臓などで糖新生に必要なピルビン酸カルボキシラーゼなどがあります。
これがないと糖代謝が正常に行われず、体内に乳酸が蓄積して血液が酸性になる乳酸アシドーシスになります。
代謝の話は専門的すぎて知らない単語だらけで難しいですね。
長期間にわたり生卵白を多量に摂取した場合に、卵白中のアビジンという物質がビオチンと結合して吸収を妨げ欠乏することがあります。加熱すれば問題ありません。
ビオチンが欠乏すると、乾いた鱗状の皮膚炎、脱毛や発疹等の皮膚障害、萎縮性舌炎、結膜炎、憂鬱感、顔面蒼白、性感異常、前胸部の痛み、食欲不振、むかつき、吐き気、筋緊張低下等が起こることがあります。
また、リウマチ、シェーグレン症候群、クローン病などの免疫不全症のほか、インスリンの分泌能が低下し1型および2型の糖尿病のリスクが高まることが知られています。
ビオチンの1日の食事摂取基準(推奨量)は成人で50㎍です。
ビオチンが多く含まれる食品は、ナッツ類、レバー、肉類、魚介類、きのこ類、大豆製品、卵などです。
熱や光に強いため、食品の保存法や調理法にあまりこだわる必要はありません。
水溶性なので、煮たり茹でたりする調理の場合、汁ごと摂ると効率よく摂取できます。
葉酸(ビタミンB9)(ホラシン)(ビタミンM)
葉酸は化学名でプテロイルモノグルタミン酸といいます。
補酵素として、プリンヌクレオチドの生合成、ピリジンヌクレオチドの代謝に関与します。
また、アミノ酸、たんぱく質の代謝においては、ビタミンB12とともに必須アミノ酸であるメチオニンの生成、セリン-グリシン転換系等にも関与します。
植物の葉に多く含まれ、黄色結晶で光や熱に不安定な物質です。
ビタミンB12とともに赤血球を作るので「造血のビタミン」といわれています。
タンパク質の合成や、細胞の遺伝情報が詰まっている核酸(DNA、RNA)の合成に補酵素として働き、体の発育を促します。
特に細胞の分化の盛んな胎児にとっては重要な栄養成分です。
欠乏により、巨赤芽球性貧血、舌炎、二分脊柱を含む精神神経異常等が起こることがあります。
一般的に入れ替わりが早い細胞に影響が出やすく、胃粘膜に潰瘍ができやすくなったり、舌炎や口内炎になったりすることもあります。
妊娠初期には特に大切なビタミンで母体の葉酸が不足すると、胎児の神経管閉鎖障害や無脳症を引き起こすことがあります。
胎児の先天異常として神経管閉鎖障害や脳形成不全がありますが、積極的に葉酸を摂ると予防できます。
葉酸の1日の食事摂取基準(推奨量)は成人で240㎍
妊娠を計画、妊娠中、授乳婦は240㎍プラス100~240㎍
葉酸が多く含まれる食品は、ほうれん草やブロッコリーなどの野菜、海苔などの海藻、肉やレバー、豆類、イチゴやマンゴーなどの果物です。
ビタミンB12(コバラミン)
ビタミンB12は化学名を『コバラミン』といいます。
シアノコバラミン、メチルコバラミン、アデノシルコバラミン、ヒドロキソコバラミン等同様の作用を持つ化合物の総称です。
水やアルコールに溶けやすく、光によって分解されやすい性質です。
その生理作用は、アミノ酸、奇数鎖脂肪酸、核酸等の代謝に関与する酵素の補酵素として重要です。
それ以外にヘモグロビン合成に関与するので貧血の予防や、神経機能の正常化の維持に欠かせない栄養素です。
赤血球の成熟に関与し、葉酸とともに骨髄で正常な赤血球をつくります。
そしてDNAの合成に欠かせないビタミンです。
欠乏するとDNAの合成が抑制されて巨赤芽球性貧血となります。
またDNAの遺伝情報がうまく伝えられなくなるので末梢神経障害や骨髄障害が引き起こされます。
欠乏により巨赤芽球性貧血になると、倦怠感、めまい、動悸、息切れなどの症状が現れます。
末梢神経障害になると手足がしびれたりします
ふさぎ込んだりといった精神症状も起こることがあります。
食品中のビタミンB12はたんぱく質と結合しており、胃の中でたんぱく質が変性・分解されると、遊離のビタミンB12になります。
このため胃の切除手術をした人はビタミンB12がうまく吸収されないため、欠乏を起こしやすくなります。
萎縮性胃炎などで胃粘膜に病変のある人や高齢者も同様に吸収不良によって欠乏に陥りやすいです。
ビタミンB12の1日の食事摂取基準(推奨量)は成人で2.4㎍
ビタミンB12の吸収は胃から分泌される内因子によって調節されているので、食品から過剰に摂取しても、余剰分は吸収されません。
また、腸内細菌によっても合成されるので、一般に欠乏することはないと考えられます。
レバー、肉類、イワシやカツオの血合い、貝類などに多く含まれます。
一部の海藻類に含まれていますが植物性食品からはほとんど摂取できません。
ベジタリアンの人は不足しがちなので、サプリメントなどを有効に使いましょう。