必須栄養素 鉄
2024年09月16日
酸素を全身に届け、元気さの源
鉄は前回のカルシウムのように多くなく微量ミネラルといって体内でわずかな量しか存在しませんが非常に重要な役割を持つ存在です。
鉄は、酸素と二酸化炭素を運搬するヘモグロビンの構成成分として赤血球に偏在しています。
そして筋肉中のミオグロビン及び細胞のシトクロムの構成要素としても重要です。
鉄の不足は貧血や組織の活性低下を起こします。
一方、鉄剤の過剰投与により組織に鉄が沈着すること(血色素症、ヘモシデリン沈着症)もあります。
鉄は酸素運搬機能や酵素機能を果たす「機能鉄」と、
鉄の貯蔵や輸送に使用される「貯蔵鉄」に分類されます。
機能鉄は体内の鉄の約70%がヘモグロビン(赤血球中の血色素)で 、ヘモグロビンに含まれる鉄に酸素がくっ付いて全身に酸素を運びます。
残りは鉄含有酵素やミオグロビン(筋肉中の赤色色素)などです。
貯蔵鉄はフェリチン(鉄含有タンパク)などの形で肝臓、脾臓、骨髄、筋肉などに貯蔵されます。
移動中の血清鉄も貯蔵鉄に含みます。
鉄が不足すると、鉄欠乏性貧血を起こします。
酸素が全身に供給されないことで体が酸欠状態になります。
疲れやすい
頭痛や動悸
息切れ
めまい
食欲不振など
の症状が現れることがあります。
貧血は機能鉄が不足しただけではまだ起こりません。
機能鉄の不足を補う貯蔵鉄が底をついて発症します。
機能鉄が不足した潜在性鉄欠乏では自覚症状がないため放置されがちですが、検査結果で貧血一歩手前と指摘されている人は女性を中心にかなり多いです。
それ以外に
子宮筋腫
痔
胃・十二指腸潰瘍など出血性の疾患のある人
アスピリンなどの薬剤を多用している人
も鉄不足に陥りやすいので注意が必要です。
成長期の子どもも筋肉や血液をつくるために多くの鉄が必要となるので、積極的に摂取しましょう。
鉄の必要な量
成人の体内の鉄の量は男性約4.0 g、女性約2.5 gです。
食品から摂取した鉄は小腸で吸収され、その吸収量は1日1~1.5 mgです。
吸収率はその時の体の状況や状態により1%未満~50%以上まで変化しますが、
平均すると約15%で、大部分は排泄されます。
肉や魚の鉄はヘム鉄で、非ヘム鉄の2~3倍吸収できます。
非ヘム鉄は、ビタミンCや良質なタンパク質とともに摂取すると吸収が促進されます。
逆に、ふすま、フィチン酸、お茶や野菜類に含まれるポリフェノールなどは
非ヘム鉄の吸収を阻害します。
1日の所要量—年齢、性別などにより大きく変動します。
推奨量で成人男子7~7.5mg。成人女子6~6.5mg、月経時10.5~11mg。
妊婦初期・授乳期はプラス2.5mg、妊婦中・末期はプラス15mg。
過剰摂取—通常の食事で鉄の過剰症を起こすことはほぼありません。
治療用鉄剤などを過剰摂取すると、便秘、胃腸障害、鉄沈着、亜鉛の吸収阻害etc,のリスクがあります。 耐用上限量成人男子50~55mg、成人女性40~45mg。
欠乏症—鉄欠乏性貧血、運動機能・認知機能の低下、体温保持機能の低下、免疫機能の低下。
小児では、豊かな感情の減退、集中力の低下、いらいら、学習能力の減退etc.
多く含む食品—特にあさりなどの貝類、豚・鳥レバー、特にひじきなどの海藻類、切干大根、卵黄、ホウレンソウetc.
鉄といえば貧血のイメージですよね。
たったの数グラムしか体内に存在してないのは意外な感じです。
女性の鉄不足解消のためにはFe108~136mgが必要ですが、
15~50歳女性では、
80%の人でフェリチンが30mg未満しかなく、
ほぼ100%の人で、フェリチン100mg未満です。
サプリで鉄を摂取するときの注意点
サプリで使う鉄は主に以下の3種類が存在します。
・2価鉄(Fe2+)
・ヘム鉄
・アミノ酸キレート鉄
2価鉄は鉄剤をビタミンCで還元したものと同じ形です。
ヘム鉄は血液中に含まれるヘモグロビンと同じ形をしたタンパク質に包まれた鉄です。
この二つは生理的に腸粘膜から吸収されるため、吸収の良し悪しはあったとしても滅多なことで過剰摂取することがありません。
しかし、キレート鉄は腸での吸収経路が全く別になっており、ほぼ素通りでどんどん血液中に入ります。
キレートはアミノ酸が両側から鉄を挟み込んだ形をしています。
この形になっているとアミノ酸を吸収するのと似たような形で腸の粘膜を通過しやすくなります。
体が鉄だと認識せずにどんどん体内に取り入れることができるので、厳密に摂取する量を守るようにしましょう。