筋膜リリース

2023年09月18日

筋膜はラテン語のFasciaを日本語に訳したものです。
ファシアと発音するのが一般的です。
物を包んだり結び合わせたりする帯を意味します。

Fasciaは筋肉を包む狭義の筋膜だけでなく、内臓の膜、関節を連結している靭帯、腱、腱膜までも含まれます。
筋膜は骨、内臓器官、血管、神経など身体のあらゆる構成要素を包み込み、それぞれの場所に適正に位置するよう支えています。
各組織を包み込んだり組織と組織の間に仕切りをつくって独立性を持ちながらコンパクトにまとめて結びつけたりして体の姿勢を保つ役割を持ちます。
組織同士が独立して動くため、こすれあうことで生じる摩擦から保護します。
『膜』という言葉から薄いつるつるした素材をイメージしますが、上の写真のように細かな繊維で立体的な網目状の膜もあります。

筋膜の種類と構成要素

体全体を覆っている筋膜は浅筋膜といいます。
浅筋膜は皮下脂肪の内側にあり、全身を覆っています。
全身タイツのようなものです。
筋肉を包む筋膜を深筋膜といいます。
筋線維の動きを支え、力の伝達を行います。
深筋膜はさらに3種類に分けられます。
筋内膜:筋線維1本1本を包む
筋周膜:複数の筋線維を束ねて覆う
筋外膜:筋全体を覆い、骨に付着する腱と連続している

筋肉はこのようにそれぞれ筋膜に覆われていますが、筋肉が筋膜によって連続性を持ってあたかも列車のよう繋がっている箇所が多数あります。

また、筋肉は筋膜に覆われて腱と連続して骨に付着していますが、骨への付着は場所によってはとても広く長い箇所があります。
こういった場所が癒着してしまうと、動きに制限が出て痛みを引き起こす原因になります。

筋膜の間には主にヒアルロン酸などを成分とした潤滑剤のような存在があり、それぞれの筋膜は独立した伸縮や運動ができます。
ちなみにこのヒアルロン酸はいくら健康食品を摂取しても補充することはできません。
自分自身の体内で必要な場所で必要なだけ生成されます。

この伸縮性が筋肉の働きで最も重要な点です。
これが出来なくなるとコリや痛み、可動域の制限などさまざまな問題が生じます。
股関節や頸の周囲などでは筋肉が多層構造でそれぞれの筋肉は違う方向に向かって伸縮します。
そしてそれぞれの筋肉は筋膜に覆われています。
潤滑剤が凝縮化すると筋膜間の滑りが悪くなります。
これを筋膜の癒着といいます。

筋膜はコラーゲン繊維、弾性繊維のエラスチン繊維芽細胞でできています。
線維と繊維の隙間はヒアルロン酸などを含む水分で満たされています。
水分が減ってぎゅっとつまってくると固くなります。
これを筋膜の硬化といいます。
ちなみにコラーゲンもエラスチンもタンパク質の一種です。
つまりアミノ酸が主成分です。
高いコラーゲンサプリを飲まなくても肉、魚、卵、大豆などを食べてビタミンCなどをを摂取すれば体内でコラーゲンやエラスチンは必要なだけ生成されます。

筋膜リリースの目的

筋膜リリースとは、筋膜の癒着と硬化を改善するのが目的です。
具体的に何をするかというと、
・癒着している場所をはがす
・硬くなったところを解きほぐして柔らかくする

この両方に共通するやるべきことは、血液や間質液の循環を良くしてあげることです。
結果としてリンパの流れもスムーズになります。
見た目にも筋肉の形が変わります。
固まっているときは角ばった状態ですが、リリースされるとふにゃっと垂れたような状態に変化します。
形がかわるだけでなく、筋肉が本来の動きができるようになり、しっかりと伸び縮みできます。
これにより代謝がアップして消費カロリーが増えるため、ダイエットにつながります。
さらに筋肉の周囲や中に通っている血管やリンパ管にも良い影響を与えます
筋膜が固まって流れを遮っていたものが、スムーズに流れるようになるのです。
リンパマッサージというものがありますが、あれは筋膜の癒着や硬化があるまま強制的に流してるだけなので、その瞬間その場だけ一時的に流しただけです。
筋膜リリースを行うと、体を動かすだけで自然と流れるように変化します。

当院では初回は時間をかけて筋膜リリース施術を行っております。
ほとんどの患者さんが正しい筋膜リリースを受けていないからです。
筋膜リリースだけでも可動域が広がり、痛さの度合に変化が生じます。

筋膜の癒着と硬化の原因

なぜ筋膜が癒着したり硬くなったりするかというと、原因は不良姿勢であることが多いです。
前かがみや、浅めに座って背もたれに斜めに体重をあずけたりすると特定の筋肉ばかり緊張してしまいます。
猫背、肩が前に巻く、骨盤が後ろに傾いている、などがそうですね。
これらにより筋膜の癒着や硬化の原因であることが多いです。

筋膜リリースと鍼のコラボ施術でシナジー効果

ツボにしても筋肉や筋膜にしても刺鍼するとガチガチに緊張した状態だとどうしても刺したときに強い痛みが出ることがあります。
そうなると交感神経が亢進して逆効果になることも。
しかし、骨に近いところや何層もある筋肉の最深部にピンポイントで直接アプローチできるのは鍼しかありません。
だから当院では先に筋膜リリースを行い筋・筋膜をゆるめます
また、鍼は非常に細いステンレス製なので、鍼灸師の手技でしならせることができます。
骨を巻くように打つことも、大きな血管や神経をよけて打つことも可能です。

筋肉や筋膜の状況によってはこの技法が必要になってきます。
これは注射針にはできない芸当です。
なぜなら注射針は構造が筒状なので曲げることができません。
さらに先端が鋭利な刃物のようになっているから切り裂くようにできているからです。

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