睡眠

2023年12月18日

毎日すべての人が睡眠をとります。
ですが、睡眠不足や眠りが浅い人が多いようです。
2018年にOECDが発表した調査によると、日本はOECD加盟国の中で平均睡眠時間が最も短く7時間22分でした。
この数値を見ると充分じゃないか、と思う人が多いと思います。
ですが、OECD加盟26か国の平均は8時間25分でした。
なんと1時間強も短いのです。
最近耳にするようになった「睡眠負債」。
これは慢性的な睡眠不足の状態を指します。
この状態が持続すると思考や感情、記憶力に悪影響が出ます。
ひどくなると幻覚を見たり、うまく話せなくなったりします。
睡眠負債を解消するにはいつもより長く寝るようにして、約3週間後にようやく正常になったという実験があります。

睡眠にはいくつかの役割があります。
「脳の疲労回復」
脳を定期的に休息させて機能回復をはかります。
「記憶の固定」
学習や技能習得をして新鮮なうちに寝ると記憶が定着しやすいです。

睡眠サイクル

睡眠には周期があります。
「睡眠サイクル」という言葉を聞いたことがありますか?
眠りにつくと最初は「ノンレム睡眠」という状態になり、約60分続きます。
そのあとに「レム睡眠」に入ります。
「レム睡眠」の「レム(REM)」とは、Rapid Eye Movement の略です。
訳すと「急速眼球運動」という意味です。
睡眠中に眼球が小きざみに動く現象のことです。
レム睡眠中の大脳は覚醒時に近い状態です。
視覚イメージを生み出す視覚連合野や、感情をつかさどる偏桃体が活発に活動します。
逆に理性的な判断に関わる前頭前野の活動は低下します。
「ノンレム睡眠」はこのREMがNon、つまり急速眼球活動していないことを意味します。
この「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」のセットを「睡眠サイクル」と呼びます。
1回のサイクルは約90分です。
これが1回の睡眠で4~6回繰り返されます。


最初のサイクルよりも、後のほうになるとレム睡眠の割合が増えていきます。
睡眠のサイクルは3つのステージからなるノンレム睡眠とレム睡眠の4段階に分類します。
最も深い状態がステージ3です。
最初のサイクルが最も深い睡眠(ステージ3)に入っているので、この最中に目覚めると不快感があります。
この最初のサイクルの時に脳波を調べると「デルタ波」と呼ばれる非常にゆっくりとした振幅の波形が現れます。
昔から「寝る子は育つ」と言われていますが、ステージ3の時に脳下垂体から成長ホルモンが分泌されます。
特に骨や筋肉の発育やけがの自己治癒などに関わります。
成長ホルモンは成人にとっても重要で、疲労回復や新陳代謝の促進に関与します。


「ノンレム睡眠」は記憶の強化や定着、再構築に関わっていると考えられています。
脳の役割に「記憶の固定」があると前に書きましたが、これは「レム睡眠」の時に行われていると考えられています。
「レム睡眠」中に脳の記憶に関わる部位である「海馬」が活発に活動していることが分かっています。

理想の睡眠環境

ベッドに入るとすぐに入眠でき、しかも深く眠って途中で起きることなく朝を迎えられるのが理想の睡眠です。
・暗い
・静か
・快適な温度と湿度
この3点が理想の環境です。
このためには
・窓に遮光性カーテンをつける
・音、特に人の話声は覚醒作用があるのでドアを閉ざす
・必要であれば一晩中エアコンなどで温度と湿度をコントロールする

入浴は寝る2時間前までに済ませましょう。
人の体温は1日の中で周期的に変化します。
体温には2種類あって皮膚体温と深部体温があります。
深部体温は皮膚体温よりも3~5℃高いです。
昼の活動中に上昇し、午後9時くらいをピークに下がります。
この時体表から放熱するので体表温度が上がります。
夜眠たくなった時に手や足など末端が温かくなってるのはそのためです。
逆に冷え切っているとうまく入眠できません。
お風呂の湯は熱すぎると交感神経が興奮するので入眠しにくくなります。
40℃前後の湯にゆっくりつかりましょう。

人の体にはいわゆる体内時計がすべての細胞にあります。
脳の視交叉上核という場所に体内時計の中核となるマスタークロックがあります。
朝起きて日光を浴びるとリセットされて1日をスタートさせます。
パソコンやスマホ画面を見るとブルーライトが良くないと言いますが、この青い光の波長がマスタークロックを動かすためです。
ですので夜遅い時間に近い距離でスマホを見ると入眠を妨げるのでNG行動です。

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