陰陽

2024年01月18日

陰陽は中国の古代哲学における一対の概念です。
これは宇宙にある森羅万象から人体まであらゆる事物や現象にも見られます。
人体の組織構造、生理機能、病理変化も陰陽で説明できることが多いです。
この陰陽論の大前提となる原則があります。

それが「互根」です。

・上と下
・右と左
・内と外

など
自分自身と対立する存在がいる
このことが自分自身の存在の前提になっています。
双方が一つの統一体のうちに共存します。
上というのは下があるからこその上です。
これは同一範疇(カテゴリー。フェイズ。)のものどうしで成り立っていることを表しています。
ヒトという範疇に男と女があるようなことです。
元は一つであること。
一つの範疇内での区分の仕方でいかようにも変化します。
同じ物でも見る角度、どこに焦点をあてるかで陰陽の中身は異なります。
この「互根」が陰陽の大前提となる原則です。

陰陽の特徴

・依存関係
陰と陽はそれぞれ単独では存在できません。
上というのは下が存在するから上として存在できるのです。

・対立と制約
陰と陽は依存するだけでなく互いに対立もしています。
これは固定的なものだけでなく、自身と相手との動態的バランスが保たれています。

・消長平衡
消長とは、陰陽が絶えず陰消陽長あるいは陽消陰長という運動変化の状態にあって流動的にバランスを維持しています。
動態平衡という表現もあります。
太陽の1日の運行や、四季の気温の変化がその代表例です。

・陰陽転化
物が極まれば変ずる、という言葉があります。
対立する陰陽が一定条件のもとでそれぞれ反対の性質に転化します。
四季がそうです。
冬は寒の極みです。
だんだん春に向かって寒が減っていき、熱が増えていきます。
夏に熱が極まります。
するとまた秋に向かって熱が減っていき、寒が増えていきます。
物が生まれることをといいい、
物が極まって転じることをといいます。
また、陰が重なれば陽となり、陽が重なれば陰となる。
ともあります。

なんとなく陰陽のイメージはつかめましたでしょうか?

陰陽の離合

一つのものがあって、それが陰と陽をあわせ持ちます。
さらにその陰も陽もそれぞれが陰陽に分けることが出来ます。
どういった視点で対象物を見るか、条件や定義によって無数に陰陽に分けることができます。
だから異なるフェーズの陰陽が存在します。

たとえば①という物があったとき、これは①陽と①陰が存在します。
①陽は①A陽と①A陰に分けることができます。
①A陽は①AA陽と①AA陰に分けることができます。

見づらい図ですが、以下のようになります。

  ①ー①陽①A陽①AA陽
   |   | ①AA陰 
   |  ①A陰①AB陽
|     ①AB陰
①陰①a陽①aa陽
|   ①aa陰
①a陰ー①ab陽
①ab陰

それぞれの陰陽は同じ記号同士が一つの物体から分かれています。
1つの物体や事象を同じ色で表示してみました。
だから陰陽といっても、①陽と①ab陰ではフェーズが異なるので、この2つが陰と陽だからといって合わせて1つ、とはならないのです。
あくまでも同じフェーズ、同じ場にある陰陽が合わさって1つの事物になるのです。
上の図では第3フェーズまでしか書いてませんが、無限に陰陽に分けることができます。
合わせていけば、すべては1つに帰するのです。
この分けることをといい、合わせることをといいます。
これが陰陽の離合です。

植物の成長にたとえて陰陽を説明してみます。
植物は成長収蔵のサイクルで生滅します。
天である地上と地である地中があります。
植物の種が地中に蒔かれます。
この種は条件がそろえば芽を出すことができます。
この発芽能力を「精がある」状態といいます。
種はまだ地中に蒔かれただけで芽は出ていない状態。
精は陰の中にいる
そして精とは元陰とか真陰といってすべて可能態として存在します。
可能態とは、現実態と対をなす言葉です。
事物は可能的存在から現実的存在に発展します。
これを陰中陰ともいいます。
1つ目の陰は地中にいることを表し、
2つ目の陰はまだ芽が出ていないことを表します。


種から発芽します。
しかしまだ土中で外には出てません。
この状態を陰中陽といいます。
1つ目の陰は地中にいることを表し、
2つ目の陽は発芽したことを表します。

発芽した幼芽が地上に姿を現します。
しかし、まだ色が淡くて細く弱弱しいです。
この状態を陽中陰といいます。
1つ目の陽は地上に現れたことを表し、
2つ目の陰は芽が弱弱しいことを表します。

芽が生育して茎がどんどん伸びて葉や花が繁茂します。
この状態を陽中陽といいます。
1つめの陽は地上に現れたことを表し、
2つ目の陽は繁茂する力強さを表します。


やがてこの植物は種を生じて枯れていきます。
この状態を陰中陽といいます。
ただし、先ほど上で出てきた陰中陽とは異なる視点での話です。
種子の有無で見ているのでここから陰陽のフェーズが変わっています。
この場合は1つ目の陰は種が生じたことを表し、
2つ目の陽は地上に種が落ちている状態を表します。

枯れた茎や根は完全に無くなって種は地中に埋もれていきます。
この状態を陰中陰といいます。
1つ目の陰は種が生じたことを表し、
2つ目の陰はその種が地中にあることを表します。

このように一連の話でも、注意深くみないと意味をはき違えることになります。

対待と体用

陰陽を語る上で知っておくべき言葉に『対待(たいたい)の陰陽』と『体用の陰陽』があります。

〇対待の陰陽
対待とは以下の意味を持ちます。
対立するものが互いに関係しあっていること
上と下、右と左、内と外など
自分自身と対立する存在がいる、このことが自分自身の存在の前提になっている。
双方が一つの統一体のうち(互根)に共存します。

〇体用の陰陽
体用とは以下の意味を持ちます。
体は存在の本質、本体。陰。
用はその本体が発現する作用や特性。陽。
両者は表裏一体の関係にある。

りんごがあるとします。
りんごの香り、味、色などは用、陽といいます。
りんごをりんごたらしめているものを体、陰といいます。
人体の生理機能や病理変化を説明するには、この体用の陰陽が大事です。
病気になるということは陰陽の協調関係やバランスが崩れることによって生じます。

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