東洋医学における陰陽理論の運用

2024年02月1日

人体の組織構造

人体は1つの有機体です。
これを互いに対立する陰と陽に区分することができます。
たとえば体の部位
上半身を陽とするならば、下半身は陰とする
体表は陽、体内は陰
背部は陽、腹部は陰

臓腑だと
六腑は陽、五臓は陰

五臓だと
心肺は陽、肝脾腎は陰

五臓六腑という言葉があります。
これは五臓が実質臓器で肝、心、脾、肺、腎
六腑が中空器官で胆、小腸、胃、大腸、膀胱、三焦
肝と胆
心と小腸
脾と胃
肺と大腸
腎と膀胱
これらがそれぞれ陰と陽の関係になっています。
六腑の6つめにある東洋医学独自の捉え方で三焦という腑があり、これと陰陽関係にある六番目の臓が心包と言います。
このあたりの詳しいことは別の機会に書きます。

生理機能

陰陽双方が対立・統一による協調関係をもつことで人体の生命活動は成り立っています。
陽に属する機能
陰に属する物質
人体の生命活動は物質を基礎としてます。
陰精(物質・陰)がなければ陽気(機能・陽)を生じることはできません。


例をあげると
陰精とは、電池に蓄えられた電気
陽気とは、その電気で作用する機能・はたらき
を指します。

また人体の生命活動の結果、陽気(機能・陽)により、体内に陰精(物質・陰)が生じます。
陰と陽の相互関係が滞りなく保たれると健康ですが、保てなくなると生命活動に不具合が生じ、最終的には死に至ります。

病理変化

陰陽学説では、病気はなんらかの原因で陰陽の平衡が保てなくなり、陰陽の協調が失われたときに生じると考えています。
この陰陽失調とは陰陽の偏盛偏衰という状態です。

偏盛
いずれか一方が水準よりも過度に高くなっている病変です。
陰盛と陽盛があります。
偏衰
いずれか一方が水準よりも過度に低くなっている病変です。
陰虚と陽虚があります。

陰陽の転化
一定の条件下で陰が陽に、陽が陰に反転することがあります。

陰陽の離反
・一見すると陽証(例:発熱)なのに内部が冷えている
・体の上部が熱いのに下部が冷えている
これがさらに悪化すると陰陽が完全に離れてしまったり、どちらか一方だけになったりすると生命の危機が迫っています。

診断・施術への応用

病気は陰陽の失調から発生するという考え方です。
東洋医学では、病は体表面の変化として表われるという原則があります。
肌の色つや、声、呼吸、脈状、体臭、挙動など五感で捉えられる変化を観察します。
そして不足したものを補い、過度にあるものを減らして陰陽の平衡を回復させます。

三陰三陽

三陰三陽は鍼灸系医学で体表を経絡の区分で体を胸(前面)、背中(後面)横側(側面)の三面に区分しています。
そしてそれぞれ手の陰経が3本、手の陽経が3本、足の陰経が3本、足の陽経が3本
手太陰肺経
手少陰心経
手厥陰心包経
手太陽小腸経
手少陽三焦経
手陽明大腸経
足太陰脾経
足少陰腎経
足厥陰肝経
足太陽膀胱経
足少陽胆経
足陽明胃経

ちなみに湯液系医学(いわゆる漢方薬を用いる)では、急性熱病などの外感熱性病の病状の変化に六経分類(三陰三陽)を用います。
太陽病→少陽病→陽明病→太陰病→少陰病→厥陰病

それぞれ部位と病態が分類されています。
太陽病
太陽部位「上」と「表」
頭頂より背中、脊柱、腰、踵に至るまで
病邪がからだの表在組織や身体上部に停滞する
病状:浮脈、頭痛、悪寒、発熱、項背部痛など

少陽病
少陽部位「半表半裏」
両耳の前後より、脇下、季肋、脇腹、足部に至るまで
病邪が太陽の表部を過ぎてやや内方に侵入した状態で、未だ裏位には達していない状態
病状:往来寒熱、胸脇苦満(肋骨弓下の張った痛み)、口苦、口乾、はき気、食欲不振など

陽明病
陽明部位「下」と「裏」
眼から下唇、心、胸、腹、髄、股、膝、脛、跗、指頭に至るまで
病状:熱が裏位と下部(陽明部位)にあり、胃、腸の部位に顕著にあらわれ、腹満、便秘、口渇、身体深部の熱感など

太陰病
太陽病期、少陽病期、陽明病期で治癒に至らず、生体に疲弊が生じて太陰病期へ移行
病状:気虚や血虚を基盤とし、腹痛、下痢、腹の冷え、食欲不振など

少陰病
気虚、血虚の状態がさらに進行し、臓腑の機能も衰えた状態
病状:全体倦怠感や四肢の冷え、下痢、脈の微弱など

厥陰病
臓腑機能がさらに衰えて重篤な状態
病状:意識レベルの低下や、体温調節障害など


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